ドロップインと綺麗な夕日

レイキーピークは年間通して大体どんな季節でも気温が上昇する10時から遅くても昼過ぎ13時には決まってオンショアが吹き始める。そして7割以上の確率でそのまま夜になるまで止むことなく吹く。残りの3割近くは日暮れ前から風が止まるか、再度オフショアーへと変わる。

昨日の夕方はラッキーな事に16:30ぐらいから風が弱まり始めたので、まだ完全に面は整っていないが、この先オフショアーに変わることを予測して部屋の目の前のピークにパドルアウトを始めた。

案の定沖に到着し少しの間すると背中のに涼しい風が当たるのを感じた。

12月から2度バリに戻ったが合計すると4ヶ月以上滞在していることになる、今回5月5日からの3回目の滞在となるが、過去2回滞在していた時と比べるとサーファーの数が一番少ない。

オフショアーに変わる前に沖に到着した時には他にオージーのサーファーが1人のみ、しばらくの間2人だけでセットの波以外は乗らずに波を回していたが、オフショアーが吹き始めしばらくすると何時も顔を見る中高生位の年頃のローカルたちが7~8人ほど入ってきた。

ローカルたちが来た途端にそれまではショートだったレギュラーの波が見る見るうちに良い波へと変わっていった。

レギュラー、グーフィー両方向に乗れるレイキーピークの波はレギュラーばかり乗る人、グーフィーしか乗らない人と分かれるので少しの間海の中の状況を見ていると誰がライトに行くのか、誰がレフトに行くのかわかる様になる。

この日私は良くなり始めたレギュラーの波を狙うことにした。他にレギュラー方向を狙っているのはレギュラースタンスで綺麗なサーフィンスタイルで何時も私の顔を見ると笑顔で挨拶してくれ、とても礼儀正しいアルファンとローカルの中でエアーをやらせたら右に出るものがいないアルマド、彼はガブリエルメディーナの様なサーフィンをするので私は彼の事をメディーナと読んでいる。そしてレイキーピーク出身で現在はバリに住んでいてビンギンでも良く顔を合わせるウエスタン、彼もメディーナに負けないほど上手なサーファーだ。その外名前は覚えていないが顔見知りの子たちが数人レギュラーの波を狙っていた。

ついさっきオージーと2人だけの時は一番良い形の波を好きな位置から乗れてたが上手なローカルたちが大勢いると話は変わってくる。セットの波が入ってもオヤジサーファーの私より数段早く良いポジションに移動して次々に良い波を乗って行ってしまう。そんな状況で30分ほど全く波に乗れなくなってしまった。ローカル達も私が長い間波に乗れていないのは分かっているはずだ。でもローカル達は入ってきたばかりなのでバンバン波に乗りたいのだろう。そんな気持ちも察しながら波を待っていたら、たまたまタイミング良く乗れるチャンスが回ってきた。少し掘れ気味の波だが胸をピッタリとボードにつけて、身体の力を抜き大きな弧を描きながらパドルをしたらテイクオフからバレルとなるポジションからのライドだった。

身体を必死に波の壁に近づけるとリップが落ちてくるのが見えた。「やった。」と思った瞬間、バレルの向こう側で人が必死にパドルしてる姿が見えたと思ったら、そこからドロップしてきた。そのようなスチエーションにあまり出くわさない私にはどうして良いかわからず、頭の中に危険回避信号がなりボードから飛び降りた。

ドロップをした子の名前はまだ知らないが海ではよく見かける。多分中学生ぐらいだろう?話しかけても口数は少なく、人付き合いなど不器用な感じのタイプの子だ、一連の動きを思い出しても、私が乗っているのを知っていて波に乗ったのは誰が見ても分かる、しかしわざと私の邪魔をしたわけでは無いことも分かる。多分自分が乗るぞーと必死になり乗ってしまったのだろう。

私がよその土地に来てサーフィンしているのだし、もうドロップしたしないで争うような年齢でも無い。別に何事も無かったようにまた沖にパドルを始めたら、礼儀正しいアルファンが、その子に向かい注意をしている。現地のスンバワ語なので内容は分からないが、厳しく注意しているように受け取れた。そして顔の表情を見ると冗談で言っているのでなく、完全に怒った顔つきだった。

よそ者の波をローカルがドロップし、そのドロップしたローカルを別のローカルが注意するなんて事はバリでは絶対の絶対にあり得ない。

私が長期滞在してると言う事も手伝ってかも知れないがアルファンの正義感ある行動に感動した。そしてこの行動はレイキーでサーフィンする一員として私の事を少しだけ認めてくれている証拠なんだろうと思うと嬉しくなる。

再度沖で波を待っていると、さっきドロップしたローカルの子が私の横に来て、バツの悪そうな、恥ずかしそうな、顔をしながら「Sorry」と言ってきた。

私は勿論何事も無かったようにインドネシア語でTidak apa apa」と返した。

もう夕日が半分ぐらい水性線に隠れたのでこの日のサーフィンも終了。小さめのレギュラーの波に乗り、暗くなりかけている岸に向かい波がないラグーンをパドルし浅瀬にたどり着いたら、腰ぐらいまで水に浸かり横向きにしたボードに上半身だけ乗せながら沖の方を見ているメディーナがいた、彼の横を通り過ぎようとした時、「見てみな。今日も素晴らしいサンセットだよ。」と言われたので、身体を反転して今まで波に乗っていた海を見ると、本当に素晴らしいサンセットだった。しばらくの間メディーナと2人で会話もせずに大きな空を魅入った。

なぜその様な質問をしてみたのか分からないのだが「メディーナはここで生まれたの?」と聞いてみたらYESと返事が帰ってきた。

その言葉を聞いて「この夕日は短期で来ている私だけでなく、生まれたときから毎日見ているメディーナにも素晴らしいと感じるのだな。」

やっぱりスンバワは凄いところだ、いつかはここに住むぞと心に決心をしたのだった。