時給1000円の人間には、重役仕事がむず痒く感じる。

今日も朝からスンバワドリームハウスの現場に向かう。バリでは通常8時開始の現場だが、棟梁が仕切る我が現場は7:30分からのスタートで30分早い。

2000年にsecret gardenを建てたときも8時スタートだった、しかし今の現場と比べると、それは8時に集合だった、と言うことに過ぎない。8時に出勤してから「ベチャベチャ」会話が始まりそれからコーヒーを入れる作業から始まる。8時と決められた出勤時間には絶対に現れ無い職人も多数いた。毎回結局8時30分ぐらいになると、やっといやいや重い腰をあげての始業だった。

当時インドネシアに住み始めの私にとっては、まだビンギンはアウェイの場所だし、こちらの仕事業態もわからない。だから長いものには巻かれろという気持ちで、本来8時には始まらなければならない仕事を8時30分スタートでやっていた。

しかしスンバワドリームハウスの現場は日本の現場同様、始業時間7:30分にはそれぞれの持ち場につき仕事をはじめている。

どちらが正しいインドネシアの工事現場での働き方かわからないが、経験上では「インドネシアの現場作業は時間にルーズ」が私の中での常識となっている。

そんなゆるゆるの雰囲気が普通なインドネシアの現場作業なのだが、なぜスンバワドリームハウスの現場は日本の様にきっちり始業時間に始まるか?? それは棟梁の出勤時間が関係している。棟梁は、職人が現場に来る前、誰も居ない現場に、誰よりも早く1番乗りで出勤をしているからだ。

普通のインドネシア人は上司が早く出勤していて、自分が遅い時間の出勤となっても、日本人の様に「まずい、上司が早く来ているのに遅れてしまった。」という心境にはならない。

しかし棟梁は遅れて出勤してきた人間、ダラダラした作業などを見ると、周りにいる全員がわかる様に大きな声で注意をする。

その様な光景は日本なら当たり前だけれど、インドネシア、それもスンバワでは見たことのない光景だ。

だからいくら場所が僻地といえども、現場は日本のように緊張感包まれる。

そんな棟梁の頑張っている姿に私も早く現場に顔を出さなければと、始業が少し過ぎた8時前には現場に顔を出すようにしている。

しかし私が朝早くから現場に出たからといって、現場仕事は全て凄腕棟梁がコントロールしているので私が出る幕はない。私が現場でやる仕事は寸法や高さを決めるときに確認してOKサインを出す事ぐらいだ。

最後にやった現場仕事は、3年前secret gardenの改装工事、その時は職人がだらけていると、私自ら重いものを運んだり、現場の掃除などをし、「ボスが力仕事をしているのだから、働かなくては。」と職人たちにプレッシャーを与えたりすることもあったが、このスンバワの現場はOkサインの係となってしまった。

名目は現場監督としてスンバワドリームハウス計画をはじめたもりだったが、私の立場を日本の建築現場で例えるなら、現場監督ではなく、大手ゼネコン会社から出向してきた重役の様な立場なのだろう。

現在はお金の計算、材料が金額に見合っているか、それと設計図の作成と訂正の仕事が中心となっている。

家でパソコンに向かいながら、そんな作業をしていて、「ふと」思ったのだが、12月が来ると51歳になる私。周りの人たちを見てみれば51歳と言う年齢は大企業の社長、やりて政治家など、芸能人なら大御所に近い年齢。どの業界でも組織でもトップして働いている年齢だ。

私は自分で自己評価をする事がよくあるのだが、もしsecret gardenの仕事、スンバワドリームハウス計画が無くなってしまったとしたら、自分を雇ってくれる場所は、「せいぜい時給1000円の回転寿司ぐらいだろう。」

自己評価がそれぐらいだから、50歳になっても、現場の仕事からはなれ、重役クラスの仕事をするのがむず痒く感じるのかな?と思う。

この文章を書いていたら嬉しい電話がかかってきた。レンガを買うお金を銀行振込したのだが、その金額多すぎだと。

日本で生活しているとピンと来ないかもしれないが、インドネシアの場合、もし間違って多くの金額を渡してしまった場合、こちらが気がついて申し出ないと戻ってこない可能性はかなり高い。

相手が「金額多すぎだよ。」とこちらに教えてくれるた。

そんな行為に「なんて良い人なんだ。」と思えてしまう。