ジャパニーズオヤジサーファーの味方

耳元でプーンと蚊が飛ぶ音で目が覚めてからは目が冴えてしまい目をつむったまま寝床で横になっていると「チッチチチッ」と鳥たちの鳴き声が聞こえはじめ出した。この1年近く決まって薄暗い内に目が覚めるのが習慣になっているので、鳥の鳴き声が聞こえたとともに寝床をたたみ、まだ薄暗い中自宅と道を挟んだ向こう側にある。secret gardenのキッチンへコーヒー用のお湯を沸かしに行った。

私がスンバワに行っている間にガスコンロは老朽化してしまい火力が上がらない、朝はコーヒーと同時に大きなマグカップで紅茶も飲むので1リットルのお湯が必要となる。弱火でその分量のお湯を沸かすまでは中々時間がかかる。じっと火の加減を見つめながらお湯が沸くのを待つのも退屈だ。だから何時もその間に波チェックに行くことにしている。

自宅から少し歩いた夜明けの誰もいないビンギンの丘の上から波を見ると昨日からサイズアップした波はまだ十分な大きさをキープしている。朝は干潮でビンギンには引き過ぎのコンディションのためサーファーは少ない、といっても8人いる。毎日すれ違うサーファーや周辺にいる人の数から予測すると潮が上げてきたら「このままサーファー8人なんて事はありえない、これはロータイドの今だけ、あと1時間もすれば30人のサーファーでごった返すだろう。」と予測がついたので朝の波を見た時点で「今日はノーサーフ」の判断を下した。

足早に波チェックを終わらせキッチンに戻るとまだお湯は沸騰していず、しばらく待たされた。少しの時間だが待つことにイライラを感じる。3週間前スンバワにいた時は少々待たされたりする事になれていたのか?こんなイライラしなかったのにな。と思いながらお湯が沸騰したので、お決まりのコーヒー、紅茶をセットで煎れた。

今日は9時から歯医者の予約があったので朝サーフィンをしてたとしても1時間程度しかできない。だからサーフィンはしないで歯医者の後はいつも通りにスンバワハッピーホームの仕入れや仕事を済ませて昼過ぎには家に戻って来た。

なぜサーフィンをやる気が起きないかと言うとコロナが開けてから海は以前の様に大混雑、セットの波を乗るなんて、バリニーズか相当上手いサーファーのみ、殆どのサーファーがこぼれ波をも狙っている中、ジャパニーズオヤジサーファーの乗る波なんて無いに等しい。

午前中のお仕事でクタなどに行き自宅に戻ると、1日に2回も渋滞の道に出る気はしない、だから午後からは殆ど家で過ごしている。でもまだ時間は昼過ぎ、夜に丸さんと食事の約束までは大分時間がある。「何かやること無いかなー。」といわばストレス解消で掃除を初めて見た。3年近く誰も出し入れしていないsecret gardnゲストのサーフボード置き場掃除しようホウキでホコリを落とし始めたとき、20年選手になろうかとしているマクタビッシュのサーフテック7`11″のボードが壁の端にたてかかっていた。

「あっこのボードがあった事忘れていた。今は58"のショートがマイボードだけれど、コロナが始まり海が空いてきたから、毎日5'8"を乗るようになったんだ。」コロナ前海が混んでいた時は、ジャパニーズオヤジサーファーの味方、このマクタビッシュを乗り混雑の海に突入しサーフィンしていた事を思い出した。

もう3年近くも浸かっていなかったので、マクタビッシュの事てっきり忘れていた。これがあれば混雑のビンギンでもショートボーダーと競合わずに違うラインで波を取れる。マクタビッシュを発見しすぐに掃除を中止してタイドチャートをチェックすると14時、これからbestタイドと言うことが分かったので急いでトランスに履き替えタッパに袖を通し海に向かった。

皆考えることは同じで予想通りこの時間帯を狙っている。サーファーは40人程いる。何千回と歩いた道をポイント目指し降りていく。波打ち際まで来るとまだ潮は上げている。そしてビンギンのインサイドブレーク(通称パイプライン)には3人、ちなみにメインには40人、潮が引くとサーフィン不可能なパイプラインだが後30分ぐらいはできそうだ。メインには向かわずパイプライン目指してパドルアウトした。そうするとすぐに波が入ってきてアウトに出たと同時にジャパニーズオヤジサーファーの乗る順番が来た。3年近くショートしか乗っていなかったのでパドルの位置が定まらずボードが走り始めるとノーズ部分が水の中に食い込みそうになったが長年の経験で上手く回避、小さめの波だが掘れている。慎重に立つタイミングを見計らいテイクオフ。波が良いおかげかビュンビュンスピードが出る、ショートならチューブ外出狙えるような掘れたセクションに差し掛かりピッタリと波に張り付くとボードはさらに加速していった。あまりに気持ちが良いので、つい乗りながらヒューマンと声が出てしまった。セクションをすぎると一気に波が厚くなりカットバックでスープに合わせた。8近い長いボードだけれどマジックボードなのでジャパニーズオヤジサーファーでもカットバックが決まってしまう。スープに当て進行方向に向いたボードに低重心で体重をかけて加速させる、そして最後はノーズの方に乗り波が消滅するところまで走り、コロナ以前ぶりのマクタビッシュでのライディングは成功した。

今日掃除をしなければマクタビッシュの事を忘れたままスンバワに戻りショートボードを続けていただろう。この先の人生長くサーフィンを楽しむにはショートだけでは限界があるな、いつまでも若者ぶらないでオヤジサーファー認めてしまったほうがサーフィンを楽しめるのだろう。と思えた今日のライディングでした。