心に焼き付いたチューブライド

昨日は一回きりだけれどチューブをくぐれた。

私のホームブレイクビンギンはチューブ波のポイント、それもパダンパダンやGLANDのようにスタンドアップで入るような大波のチューブのポイントではなく波のサイズが小さくてもテイクオフして波に張り付きじっと我慢をしていると勝手にチューブの中に身が包まれてしまう。たとえそれがバックサイドとなるレギュラースタンスでも他所のポイントより簡単にチューブライディングを決められてしまう。

十数年前まではビンギンで1ラウンドサーフィンすれば最低でも1回はチューブライディングを決められたのだけれどそんな日はもう遠い昔の思い出となってしまっている。

何故かというと私の目に異変が起き急に視界が狭くなり普段見えていた場所が見えなくなり、以前まで乗れていた波に。以前テイクオフしていたポジションから。乗れなくなってしまったからなのだ。

「今日は絶対にチューブに入れる奥深い位置から乗ってやるぞ。」と意気込んだり、どんなに自分の心をGO FOR ITさせようが以前と同じテイクオフが2度とできなくなってしまったのだ。

だからそれ以降はどのポイントでサーフィンしても人よりも沖で構えて大波をまったりしないようになってしまった。テイクオフをミスしないなるべく易しく乗れそうなショルダー側で小波を選んで乗っている。

やはり小波のショルダーからのテイクオフでは、いくらチューブに入りやすいビンギンの波でもしっかりピークから乗らないと身体だけはグラブレールでチューブインの体勢だけれど実際チューブは自分の後ろで巻いているという無様な姿になってしまう。

それなのでビンギンでもチューブライディングが決まるのは年に1度あるか無いか。

もう自らチューブライドを狙うことも無くなりチューブに入りたいという欲もなくサーフィンを続いているのだが、一昨日から少し波が上がり風向きと潮周りがチューブ波が割れるペリスコープというポイントにバッチリのタイミングとなった。そしてここはビンギン同様大波でなくてもチューブに入りやすくビーチブレイクカインドの波質。

私のステイ先からは塩田のあぜ道を15分ほどバイクを走らせると到着する。バイクを駐車して背の高さより低い茂みを超えると左右人工物何も見えない白い砂浜の200mほど沖合から規則正しくブレークする波が見えてくる。波は浜に打ち上げるショアーブレイクまで続き、波が岸に打ち上げる前にプルアウトすると沖に戻るまで一切波をかぶらずに行ける。

この日はタイドが一番良い上げ潮になる前に行くと沖合にはローカル1人と年配のオージーが1人しか入っていない。混雑しているポイントでは「波に乗るぞ~」とパドルをはじめてもしも自分が波に乗れなかったら周りにいるサーファー達に悪いなと思いどうしてへんてこな波ばかりつかみがちだけれど、広大なスケールのペリスコープの海の中には私を含めて3人だけ。

波は少し掘れ気味だけれどどうにかテイクオフが遅れず乗れそうな波質、そしてセット波はブレークは少し速いけれど綺麗な形をした薄めのリップがボトムめがけて飛んでいる。こんな状況に「今日はチューブライディング日和」だと普段は狙いもしないチューブを狙ってみようと気持ちが高まってきた。

数本テイクオフを試みるがどうしてもうまいタイミングで波に乗れなく、波が先に行ってしまったり。ひどい時は真っ逆さまにワイプアウトなど、繰り返しチューブライディングを試みるが1時間半ほどしても1本も決まらず。

良い波に乗れずラウンドを終了することにも慣れてしまってるので、「あーあ今日もダメだった。」パドルをたくさんして首も腰も痛くなってきて疲れたし後一本テイクオフしたら上がろうかなと岸方向をみて自分の波待ちのポジションを確認していたら普段いつもレイキーピークのポイントで顔を合わす子供たちがパドルアウトしてくるのが確認できた。

子供たちは身体つきから見ると小中学生ぐらいなのだろう。5人ぐらいが少しずつ間隔をあけて沖に向かってくる。そして最後の一本を乗って今日は終了しようと思っていたところに、この日一番だったと思われるのセット波が入ってきた。

沖合で波待ちしている私の前に壁のような長いショルダーのド迫力の波が押し寄せてきた。テイクオフがうまくいくか不安な気持ちでパドルを始めると意外にもスーッとボードが走り始めた。久しぶりに波に置いて行かれない会心のテイクオフ、ボードに立ち上がると同時に右側のレール部分と身体を波方向に張り付かせ、恐怖心を交えながらリップが巻き上げる場所に目線を移し身体を構えた。ほんの一瞬の出来事だと思うが「どっかーん」という音とともに自分の体がすっぽりと波の中に包まれて行くのが分かった。絶対に目線を下に向けないようにリップが飛び出すカールになる部分を見続けていたらショルダーがなだらかになり、沖合にパドルアウトしてくる子供たちから「ヒューっ」という歓声と拍手喝采で見事チューブライディングが成功した。

このチューブライディングはこの先一生忘れられないと景色が脳に焼き付いたと思う。

さて今日も各ポイントGOOD WAVE。潮周りが小さく、風が吹き出すまではピークにパイプ、ナンガス、ハイタイド周りはペリスコープがよいでしょう。