走り切れたことで人生は飛躍する。

31歳で4歳と1歳の2児の母の私の奥さん。三十路を迎えたという事と、2人目の子供を出産してからは、贅肉が付きやすい体質に変わってしまったようだ。

私はそんな姿を、自分の髪が薄くなり白髪が増えるのと並行し「奥さんも年相応に変化していくのだな。」と見守っているのだが、まだ30の年齢の奥さんは自分の身体がおばさん体型に変化していく事が気になるようだ。

そんな奥さんは最近ネットショッピングで縄跳びを買って家の中で飛んでみたり、ノリの良い音楽をかけてエアロビモドキな事をやってみたり。身体が引き締まるボディースーツを着てみたり、腹周り、お尻周りについた贅肉を落としてボディーを若返らそうとしている。

私は、普段から10km前後だがランニングを日課にしている。何年も続けている体重、体調管理は、最近自分の体型を気にし始めた奥さんよりも何倍も気にしながら生活をしているので、奥さんが家の中で行っているダイエット方法を見ていると、「こんな甘いトレーニングでは痩せないな。」という事も分かっている。

奥さんとはもう10年以上の付き合いだが、その間には運動やヨガなどにチャレンジしたこともある。しかし数カ月経つといつの間にかやめてしまっている。運動系ではない勉強や調べごとで難題にぶつった時も「こんなの分からない。」とすぐに諦めてしまう。唯一継続できたのは毎日通わなければ行けない仕事だけだ。それ以外は何をしても中途半端で一生懸命やり通した姿など見たことが無い。

私はそんなダメ奥さんを長年教育してきたつもりだったが、その姿勢は一向に変わらない。30歳を過ぎると将来への可能性は狭くなる、「もうこのままダメ人間。」で人生を過ごして行くのだろうと思っていた。

ある日、友人の大介さんから八ヶ岳に登ったよー。とメールが来た。そしてそれからあまり日がたたないうちに続いて富士山、乗鞍岳、御岳に登ったよー。と知らせが届いた。

風貌から登山などしそうもない大介さん、その話に奥さんは大介さんが立て続けに高い山に登ったことに驚いていた。ちなみに奥さんは私の登山に4~5回付き合ったことがあるので大変さは知っている。

私は奥さんになぜ登山初心者の大介さんがハードな高い山に登れたかと言う事をこう説明した。

仕事は誰が見ても成功者の部類に入る大介さん。「大体仕事もスポーツもなんでも共通して言えることだが、成功している人は物事を諦めず少々苦難があっても乗り越える、だから成功するんだよ。」山登りは仕事では無いけれど、成功を収めた人たちは、途中苦しい事があっても頑張って乗り越えようとする。「だから体力に自信がない人だったとしても、死んでしまう無謀なチャレンジでは無い限り、少々辛くても厳しくても乗り越えていくんだ。最後まで諦めない気持ちがあれば達成できる事を身につけているんだよ。」と伝えた。

大介さんからの連続登山の報告を聞いた後日に、奥さんをランニングに誘ってみた。以前数回一緒に走ったことがあるが、1kmも走らないうちに歩きだしてしまう。私はそんな姿を見て、「歩くな。頑張って走り続けろ。」と罵声を浴びせるが毎回のごとくリタイヤしてしまう。

久しぶりに一緒に走る今回、走る前にこう伝えてみた。「ビンギンからクタまで走れと言われたら、ランニング経験がない人には、誰が想像しても無理だろうし、はなからやる気も失せるだろう、でも家の近所を5~6Km走るだけならできそうでしょう?少しぐらい疲れようが脚が痛くなろうが気持ちを強く持てばできる。ゆっくりでもいいから諦めないで走りきると自分に誓ってみな。小さなことだけれどできた時は自分に自身がつくよ。と」

その後すぐにランニングシューズを履いて出発すると、いつも歩きだしてしまう急激な上り坂もなんとかクリアして、顔を真っ赤にしてもう脚が空回りしてしまいそうな姿で辛うじて諦めずに走っている。3Kmの折返し地点までも一度も歩かず到達した。ここまで走り続けたのも初めてのことだ、そしてリターンの3kmもハアハア息の音を荒立てながら、最後の急な上り坂に差し掛かった。この坂は男性でも歩いてしまうような急坂なので、ここは無理だろうと思いながらも、「この坂休まずに登りきってみ。」と伝えたら、なんと予想外に登りきってしまったのだ。その坂が終わると後は海が一望できる崖までの下り一直線。私は最終ダッシュで奥さんとの距離を離し先に到着、その後すぐに続いてきた奥さんに親指をグッドサインにして迎えたら、素晴らしく可愛い笑顔で完走ゴールをした。

その顔を見ると本人もやり切ったことに満足しているように見える。私も何をやっても諦めてしまう駄目な人間だった奥さんが、物事をやりきれた事を目の前に見れてすごく嬉しい気持ちになった。

これを境に彼女の人生は良い方向に変わっていくだろう。これからは彼女に課題を与えて乗り切っていく癖をつけさせようと思っている。

そして私自身も、「もうだめだなと」諦めかけていた人間でも、何かをきっかけに変えられることが分かり自分自身も勉強になった。

ランニンを完走後家に戻り、もう一つ奥さんに伝えた事がある。それは、人は人が頑張っている姿を見るのが好きで、人が頑張っている姿がある場所に人は集まり、応援、声援を送ってくれると言う事を。なぜこような話をしたかと言うと、ジョギング中に起こる出来事が丁度いい例となるので、タイミングよく走り終えた後にこの話を切り出した。

バリでは普段、個人でジョギングをしていても顔見知りのインドネシア人、顔見知りでも無い欧米人が「頑張れ」と声援を送ってくれる。そうすると走っている本人は、くじけず走り続けるぞと力になったり、もっと速く走るぞと、ポジティブな思想になる。しかし走ることを諦めてしまい歩いている人には誰も声援など送らない。

仕事も人生もうまくやるには、日々のジョギングで諦めずに走り切ること同じ。物事に没頭して頑張っていると自分は成功しようなど思っていなくても勝手に結果がついてくる。答えはすごくシンプルなんだよ。と伝えてみた。

さあこの先彼女がどのように飛躍していくか楽しみだ。